スター☆トゥインクルプリキュア

スター☆トゥインクルプリキュア vol.1[Blu-ray]

スター☆トゥインクルプリキュア vol.1[Blu-ray]

 

 ゴープリから続けて3作。自分には合わないプリキュアが続いたので、今作はハードルを下げまくって見始めた。80年代を意識した絵柄にしたと聞いたが、なんか地味。物語もどこか地味。だが、ドラマのテーマや落としどころはストンときて納得。派手にしてもどこが違うと思わされた前作とは違う。これでいいんだよ。これで。それがジワジワきて好感度も少しづつ増していった。中盤まではアイテム探しで宇宙を旅する展開で。それが終盤、アイテムが揃うが、まだ使命は果たせない。使命を果たすには、自分の中にある力を見つけよ、となるが、ここからがこの作品の注目点だと理解した。普通の少女たちが、広い外宇宙を巡り、経験を積み、そして、それを糧にして自身の内宇宙=内面の成長を表現する構成になっていたのだな。

プリキュアで扱うテーマは、数作続くこともあったり、いきなり大きく変わることもあったり。今作は「多様性」と「なりたい自分になる」ことだと思うが、これは前作と同じ気がする。「なりたい自分」はゴープリから続いて4作目。ありえない目標プリンセスを目指し、目標を再定義して成長し続けたゴープリ。ありえない目標魔法使いを早々に達成して日常生活を遊ぶマホプリ。現実的な職業パティシエールを早々に達成して、先が見えなくなった(というか、自分が見る気を失って観なくなった)キラプリ前作は、なりたいものを捜す話かと思ってたら他人を無責任に応援するばかりの主人公に辟易した…。途中で観なくなったから結末は良く分からないが、それが女社長ってのが納得できず。で。今作は具体的な「なりたい自分」の提示はなかった。むしろその一段前の話。もっと根源的な意味での「なりたい自分になる」話。具体的な職業うんぬんの前に、そういう成長の方が大事。だな。終盤の自分の中にある力を見つける展開がまさにそれに直結する話で。5人がそれぞれ個別エピソードで自身の成長を確かめていくわけだが、初めから課題が見えてるメンバーはまあ普通か。故郷を奪った相手に同質性を見つけて許したり、親に引かれた人生のレールを自分のものとして取り戻すとか。多様性の一角である自身が他者に認められるとか。でも最初から物語上ゴールの立場にいるはずのふたりがどう成長するか、にはかなり感心できた。笑顔が一番、周りとのコミュニケーションをが大切、と笑顔を振りまくキャラには、その笑顔が作り物だと母親から看破されたり、みんなと違ってもいいんだとまさにもうひとつのテーマ「多様性」をしっかり把握できていたはずの主人公は友人たちとの交流を経て、変わらない自分に疑問をもったり。変わろうが、変わらなかろうが、誰しも悩むし、そして成長するんだ。地味で結構。最初から最後まで、地に足の着いた堅実なドラマを見せてくれて、自分はうれしい。
好きかどうかで言えば、ドキドキの方が上かもしれないが、作品の質としては、ゴープリに肉薄するぐらいの作品ではあったと思うよ。

ということで、昨日は実質の最終回だった。キレイに結末を描けたことも良かったが、何より演出が冴えていた。宇宙が闇に消え、小さな光の元、5人だけで語り合い、歌う、静かな場面。続いて激しい動きで盛り上がる派手な最終決戦。この静と動の対比よ!

音楽:林ゆうき氏のプリキュアでの楽曲は、個人として素晴らしいと思える曲はなかったのだけど(合わないとは言ってない。無難と言ってる。)変身の歌だけはとてもキャッチーで好きだった。それが今回の静の場面で歌われ、ラストバトルでは激しい曲調で流れる。わくわくしたね!

来週はどんな蛇足な最終回であっても、笑って見られそうだ。

さて、次のシーズン。テーマが「癒し」なようで、新テーマに移行、と捉えて良いのだろうか。音楽のひとも変わったしね。とはいえ見た目もマスコットも旧来からある「あえて代り映えのしない」プリキュアって感じだが、今度はハードル思いっきり上げるつもり。主人公の声がもはや大物の風格、悠木碧であるのはともかく、シリーズ構成が香村純子であるからだ。ルパパトから一年。彼女なりのプリキュアをどう書いてくるか、期待したい。

最後に「スター☆トゥインクルプリキュア」についてもうひとつ。
主人公の声がものすごく独特で。最初から中盤ぐらいまで、慣れるまでかなり時間がかかった。だが、主人公自身の成長と合わせて、声優のひともぐっと力を付けてくれたのか、演技か自然になっていったように思う。ユニークすぎるので他のキャラを演じ分けられるのか、演じるつもりなのかは多少心配ではあるが、ともあれ「キラやば~っ☆」はこの人にしか言えないセリフになったろう。