偽りの黒真珠→凍える銀鈴花(SW)

※「偽りの黒真珠」が1作目。「凍える銀鈴花」は続編というかシリーズ2作目です。


ファミコンの「オホーツクに消ゆ」や、その頃のミステリーアドベンチャーを意識したタイトル。荒井清和氏のイラストさえあれば雰囲気はバッチリ。あとはそつない音楽とそつないシナリオさえつけてくれればファンは入れ食いのはず。自分も含めてね。

とはいうものの、実際の手触りは「オホーツク」とは意外に違う。当時のファミコンのカートリッジはメモリは少なく価格は高い。つまりボリュームはそこそこなのに数時間でクリアさせるわけにもいかない。そこでところどころに意地悪な仕掛けを入れてプレイ時間を稼ぐのだが、これが詰まりになってテンポも悪くなる。

しかし現在は意地悪な仕掛けで時間稼ぎをする必要はない。いや、必要ならいくらでもシナリオのボリュームを増やせば良いのだ。かくしてこのシリーズはゲームというより読み物という方向に特化されたのであった。総論はここまで。あとは各タイトルの感想で。(多少ネタバレあり)


・偽りの黒真珠

伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠|オンラインコード版

伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠|オンラインコード版

  • 発売日: 2019/05/30
  • メディア: Software Download
 

 構想から実際のリリースまでに相当時間をかけたっぽい。出来を考えるに開発自体にそんなに時間がかかるとは思えず。察するに…。権利なんだろうなあ。
旅行の名所。その地域の雰囲気を紹介、ということは現地スポンサーを募ろうなんて発想は容易に思いつくが、しょせん地方の地場産業。それほどスポンサー費が稼げるわけでもない割に、余計な口出しばっかり増えてがんじがらめになっちゃったのでは?……なんてね。何の根拠もない邪推なので関係者がこれを読んでいたらお詫びしときます。でも、作品中に地方の名産をこれでもか、と出す割に実在固有企業/商品名が出てきてないっぽいあたりに邪推の余地が…。

出来に関しては。ともかく最大公約数的にファンが「これだよね」って思える内容を入れ込んだのが分かる。特にその期待を素晴らしく具現化したのがテーマソング。「儚(はかな)い珠(たま)のように」だ!JOYSOUNDのカラオケにも入っているのがうれしいところ(採点してくれないけどね)


伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠(Nintendo Switch)


もうそのままサスペンスドラマのエンディングで流して欲しい出来栄え。

もちろんシナリオ展開もイメージどおり。殺人事件に美女との出会いに温泉に。ラストのダンジョンも、オホーツクファン向けなのだろうなあ。そして「この人が犯人?それは嫌」な空気をにじませながらもそこには落とさず読者が傷付かない人間が犯人、と。悪く言えばテンプレどおり。一作目だからね。作り手の意思も分かるし、個人的にもそれでいいです。奇をてらったような余計な展開はいりません。


・凍える銀鈴花

犯罪組織の検挙が当初の目的。え?こういうのは殺人事件じゃないと燃えないんだけどなあ。展開もくどくてなかなか進まない序盤は正直辟易。しかし最初の殺人が始まったあたりから展開に緊迫感が出てきて誘拐阻止→犯人逮捕の流れはかなりクライマックス感があった。だからそこでラストでも自分は満足していた。使ってない伏線がちょっと気になったけど、満足していた。
…でも。そこからまだ続くのだ。残ってた伏線もひとつひとつ回収してきっちり、完璧に終わらせてくれたのは良かった。前作のテンプレ展開で我慢していたシナリオライターが今度はいい方向に奮起してくれたのだろうか。自分は大満足。1回目のエンディングで前作程度のボリュームだと感じたので最終的な全体ボリュームは前作の1.5倍ってとこかな?これは3作目も期待できるかな?

ちなみに今回のテーマソング。前作のキャッチーさにはだいぶ及ばない感じ。良い曲だとは思うけどね。


「秋田・男鹿ミステリー案内 凍える銀鈴花」プロモーションビデオ Nintendo Switch