SHOGUN 将軍

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評価がすこぶるよろしいと聞く。評判聞くだけではもったいないと判断したので、ついにDesney+に申し込んでしまった。ひととおり観終わったので、感想。ネタバレは気にしないのでご注意ください。

(なお、1話観た時点で1980年頃の旧作も観ておくべきと思い、(多分)映画版を探して観ている。こちらはほぼ按針視点で不思議の戦国日本に迷い込んだ白人さん、という扱い。まり子役島田陽子の正統派ヒロインぶりが盤石で、いちいち「アンジンさん」とか言われててなんかぬるい。)

あまりに高まった期待のハードルをそこそこ整理。下げて、なるべく真っ当な目線で観て。普通に良くできた作品だと思いました。
そもそもこの作品、いろいろあちこち配慮しまくり。原作に配慮。西洋人の観たい日本観に配慮。日本人の考える時代劇的歴史感に配慮。実際にリアルな日本の歴史に配慮。つまりマイナス点をいかに減らすか、に注力してる作品なわけだ。当時あれだけ「リアル」という触れ込みだったラスト・サムライですら感じた違和感ほぼなし。舞台の平野が広すぎない?という気がしたが、カナダロケという情報がかえってそんな思い込みを生んだだけなのかもしれない。
いきなり釜茹で、いきなり牢獄行といった、あれ?という展開は、原作を尊重してるっぽい。

違和感のない戦国日本の世界観を情緒たっぷりに見せつけることが当作のキモでもあるので、ストーリーのテンポは割とゆっくりめ。なにげない風景も日本文化に馴染みのない海外視聴者にとっては「Oh! ビューティフルでエキゾチック!これがリアルなニホンね」とか堪能できるのだろう。でもその手の景色に見慣れた日本人には多少間延びして見えるかも。なんちゃって日本の方が「違和感探し」が楽しめたのではないかと。贅沢な話よね。


この物語で触れておかなくてはならないのは「切腹」について。ちょっと多すぎな気もするが、このトピックこそが戦国日本社会の精神性という本作最重要テーマの象徴。仕方がないのだと、観終わってから分かった。
序盤で虎永の家来が切腹するのは、子供も根絶やしで何で残酷な、としか思えないかもしれない。しかし中盤の庭師の自死のところ。残酷ではあるが、これが周囲への配慮と主の命令を測りにかけて導かれた、命をかけた責任の遂行を意味していたことが分かれば終盤の切腹ラッシュも理解して見られるようになる。按針の切腹行為は、彼がついに異国からの客人から、この世界で生きて死ぬ存在になった、その境地に達したことを虎永そして按針自身に分からせた物語の終着点なわけだ。
藪重の切腹はエピローグ。彼の道化のような人生はここで終わらさなくてはならないが、そのシーンを利用して、これから起こるはずのクライマックスを、視聴者に見せないままで完結させるテクニックには圧倒された。虎永の先読みは、普通ならただの彼の妄想でしょ?で終わるところだけど、我々は歴史の答えを知ってるからね。納得せざるを得ない。上手いわ。

おまけ。男性の配役陣は文句なし。全員ピタリ。女性陣は、鞠子役のサワイ・アンナが、当時の日本人女性と考えるとちょっと別の民族の顔付きに思えてしまうのだが、西洋人にとっては彼女の顔の方がより「ニホン人」に見えるのだろう。これも配慮。芝居も英語もうまいので文句は言いません。二階堂ふみは上手すぎ。あの妖しい演技がどこまで世界に通じたかはいろいろ海外反応を見てみたい。穂志もえかはかわいいね。あのあどけない表情が現代の日本人女性に近いと思うんだ。ああ見えて芯があるところもね。彼等のさらなる活躍に期待したい。