三頭の虎はひとつの山に棲めない

食の視点から来日して「英国一家、日本を食べる」を書いて親日家になったマイケル・ブースが、日中韓関係に関する本を出版していたと知った。他国人による日本の話は好物だが、さらにこのテーマに挑むとは。普通はスルーするところ、さすがは僕らのマイケル・ブースである。

彼は日本を何度も取材して日本人の文化や考え方を理解してくれているので、その点は心配してないのだが、それでも。イギリス人として戦中日本についての「偏見」はやはりあるだろう。さらに彼は朝日新聞と仲がいい(はず)。6年ほど連載を持っていたようだし。記事はあまり読んでないが、自分はちゃっかり朝日新聞社主催の彼の講演会を見にいったこともある。その朝日にいろいろ影響受けてそうだ。そのへんを意識して読んでいく。

この本の体裁は、日本→韓国→中国→上海→台湾→そして日本、と旅行しながら現地の空気を肌で感じ、現地の人物と会話していくなかで著者の所管をまとめていく。「英国一家、日本を食べる」のときと同じ。彼のいつものスタイルだ。

まずは日本。東京から車で南下。
左派系の話にいちいち頷き、嫌韓・嫌中日本人の話は頭から否定。そうくるとは思っていたよ。しかしそのスタンスは変わらないものの、文章としてはその事実を否定できていない。さらに韓国に渡り「それみたことか」な事実に突き当たる。日本がいくら謝ろうが韓国人は許さないし、許す気もない。悪いことはべて日本のせいにして、己れの都合と見栄えばかりを気にする韓国人たち。反日が韓国人のアイデンティティになってさえいるというどうしようもない事実。中国も反日も相当なものだが、偏執的な韓国人達の生き方には、改めて呆れる。上に書いたとおり、マイケル・ブースは最初の時点で偏向はしている。が、彼は彼が自覚できる限りにおいてなるべく客観的に事態を知ろうと努め、それでいてこの有様だ。彼がインタビューした嫌韓日本人は突出した人が多かったようで「日本は悪くない」という考えに踏み込むあまり、他国への侵略の事実を矮小化していたかもしれない。しかし一方の「被害者」の言ってることは本当に100%正しいのか?それぞれの主張に与しないよう、マイケル・ブースは触れないが、彼の書く文章からはその「被害者が語る事実」についてのダウトがいくらでもはみ出てくるのだ。

そして最後には当たり前の結論にたどり着く。この日中韓関係において、日本人ができることはあまりない。中国人…というかとりわけ韓国人だよな。彼等が日本を普通の国として扱い、普通に互いの利害を考えあえるようになるしかない。「それは一気に訪れることはなく、ほんの少しづづ、一世代あるいは二世代分の時間がかかるだろう」とマイケル・ブースは書く。そう書かないとオチにならないだろうが、そんな長い時間は希望的観測としてもさすがにボヤケすぎだろ。