未来戦隊タイムレンジャー

時間を扱った、複雑なSF展開を予想するとあっさり裏切られる。
仮面ライダー電王が、時間を記憶に変換してドラマにしたように、今作も、一風違った切り口で、ドラマを作っている。(脚本同じひとだしね。)
それは作中で主人公によって語られる。「たとえ未来がすでに決まっていることであったとしても、自分の明日は自分で作る。」過去も未来も関係がない。今をどう生きるかという、そういう真っ当なドラマ。それがタイムレンジャー

作品全体は割と地味。特に敵がね。そんなにワルじゃない。世界征服なんて企んでない。ただ自分とそのファミリーが楽しく暮らすために、ちょいと犯罪を犯すだけ。義理人情・道理も分かっている。何より世界が滅んだら好きに生きられない。極道に生きるひとよね。ドン・ドルネロ
まあ、幹部のひとりが頭おかしくなってて世界壊滅に動いてくれるおかげでクライマックスが出来るのだが。女幹部が倒されることなく、さらっと姿を消す展開も珍しい。面倒なことから上手に逃げちゃうあたり悪女として出来がいい。物語終了後もうまいパトロンを見つけて楽しく生きているのだろう。

主人公側のメンバーも。未来人男性3人の第一印象はあまりぱっとしない。未来世界から置き去りにされて手持ちの武器で犯罪者を全員拘束するまで帰れないという…。しかしここでリーダーに収まる主人公が現代人。それも大金持ちの子息という設定がいい。現社会の人間がリーダーで、残りメンバー全員が異世界人というのはジュウオウジャー、ゼンカイジャーに通じる。同じ脚本家でみるとシンケンジャーが近いのかな。赤が真っ当リーダー、クールな青、お調子者の黄色、子供の緑、紅一点ピンクと、ゴレンジャー直伝の元祖配色なのも安心感。が。追加がもうひとりの赤というのがこの作品の特徴か。
追加戦士タイムファイヤーこそがこの作品の鍵。金持ちの御曹司という舞台から降りたい主人公と、貧乏な立ち位置から上に這い上がろうとする強い上昇志向を持つ、対の存在。そのダークヒーローぶりは、立場としては正義だが、己れのためにはズルをしかねず、それほど悪でもないドルネロたちと大差ない立ち位置ともいえる。それがこのドラマにリアリティを与えてるのだが。そのダークヒーローっぷりは、脚本、小林靖子のらしさに溢れたキャラだと思えた。

蛇足だが、この作品のピンクのクールビューティっぷりがお気に入り。レッドのいない状態では彼女がタイムレンジャーの実質リーダーで。「ヒーローものに、いないですよ」ぐらいのクールぶり。