Go!プリンセスプリキュア

とんがっていた分、否定派もそこそこ居た「佳作」のドキドキ!プリキュアに対し、今作は、誰もが認める完成度の高い非の打ち所のない「名作」だったと思う。例えばそれは主人公のキャラクター。ドキプリ主人公=相田マナは最初から完璧超人として登場して「現実味がない」と評されたが(そこがいいんだけど)、平凡な娘が夢を追ってぐんぐん成長していく春野はるかは誰もが感情移入しやすい。いかがわしくなりがちの味方青年キャラであるカナタは終始いいひとで嫌味もなし。すべてのキャラは行動理由が分りやすく嫌いにならない。そのなかでひとつだけ最初から気になったのははるかの「プリンセスになる」という夢で。出自が全てのはずの「プリンセス」をどうやって平民が目指すというのか?多分はるか本人にも最初は良く分っていなかったのかもしれない。それが、1年の戦いで。本物のプリンセス、トワイライト=トワとの邂逅もあって「プリンセスになる」ということが「つよく、やさしく、うつくしく」という生き方そのものに収斂していくのが自然に書かれていたと思う。夢を補強してくれていたカナタの言葉が否定され、なぜ「プリンセス」などという夢を目指したのか、原点を振り返ったエピソード。そこでは夢そのものより夢を追うことで成長と仲間を得られた現在を肯定。ディスピアの陰謀でプリンセスになったエピソードでも、ゴールすることより、成長し続けることに喜びを見出し。最後は夢と絶望を繰り返し成長し続ける人生を認識する最終回。第1話から戦ってきた宿敵クローズと共に導きだした結論に、物語の完成=正しい終わりを見ることが出来て感無量。1年の長丁場シリーズなのに、すべての話、すべてのシーンに一貫して意味がある無駄のない作品だった。個人的にあまり意味のない2015年だったが、このプリキュアがあったから乗り越えられた気がする。

音楽は。すでに大晦日にも語ってはいるけどRPGのBGMとしてそのまま使えるバトルもまた良し。過去2作でも良い楽曲を提供してくれた高木洋氏だが、質量ともに今作が一番、だろう。


しかしこれで売上最低記録更新なのだから、この業界、厳しいなあ。娘のいない中年男性ファンとしてはサントラと発売予定の「オフィシャルコンプリートブック」を買うことぐらいしか貢献できないのがなんとももどかしい。「あそんでプリキュア」もちゃんと商売になっているのだろうか。

今日から始まる「魔法つかいプリキュア」はこの壁を越えるか、これを標準レベルとすることが出来るか。期待するしかない。
ちなみに前作「ハピネスチャージプリキュア」感想がこれ。「お気に入り」と「そうでもない」作品が繰り返されるわけだ。