闇の血族(X68k/PCE)

X68k版は何度目のプレイかな。(前回のプレイ感想はこちら)久々にCM64と接続して。
やってみたかったんだよね。PCE版とのザッピングプレイ。果たして。その価値は十分にあった。
X68kからPCEに移植するにあたり、どういう変更をしようとしたのか。平行してプレイすることで分かることは多い。

大きいところは、そりゃ絵と声ですよ。
原作のビジュアルは、好みはあるがあまり一般受けするものではなかったと思う。いのまたむつみの伊澤 魅由も…、好みはあるんだろうが自分の目には美人。あざといぐらいに美人。

いいですか。同一人物ですよ?

同一人物ですよ?

同一人物ですよ?

そして、魅由自身の語りによる文体はそのまま声優がしゃべることになった。
同じ独り語りとはいえ、文字=文章止まりと実際に語るのでは意外と文体も変わるもの。「はふ。ちょっとため息」なんていちいち語られてもクドすぎる。
それだけが理由でもないのだろうが、実際、テキストはほぼ全面書き換えられていた。初っ端パーティ会場からスタートってのも驚いたが、原作どおりの流れになってからも、話の順番が少し変わっていたり省かれたり追加されたり。演出もいろいろと修正され。「南米の血がヒントだと気付いて魅由に告げる」シーンの理沙は原作では取り乱しまくりだが、PCE版では逆に感情がない状態になっていたり。理沙がいなくなるタイミングがメキシコのホテルから、神殿に入る直前になっていたり、南米の血の話があまり重視されなくなったり。マリーのオカルト好きが強烈になっていたり。死人の数がひとり減っていたり。序盤の魅由のマンションの屋内巡り、メキシコの観光情報などが大幅にカットされてたり。神殿内の世界の歴史が書かれてる壁もカット。世界の再構成で自分が身近な人々の記憶から消えるかも、というくだりが消えたのは物語の仕掛けとしては大問題だと思うけど、わかりやすさを追求したのかな。そんなに大変な感じでもなく処理されてたな。


シナリオ改変は好みの問題だろうが、それとは別にあきらかに改悪になってたと言いたいのが3点。
ひとつは絵の描き込み。キャラ絵は前述どおり好みの問題だが、一枚一枚の絵の、特に背景がシンプルすぎなのはなあ。あっさりしすぎ。PCエンジン的には普通なんだけど、原作のX68k版がかなり気合入れて描きこんでただけに、物足りなさを感じる。

次が音楽。原作も内蔵音源で聴いてたのなら、あまり遜色は感じないかもしれない。しかしこのタイトルはCM-64でプレイしてなんぼのタイトルですよ!PCM音源によるピアノ、ストリングスなど楽器音を使いこなした素晴らしい演奏!内蔵音源とは出来が違いすぎなのです。FM-TOWNS版はCD-ROMでこのCM-64演奏を再現したと聞く。PCE版でもそのままの移植ならCM-64音源で行けたはず。しかしPCE版はCD-ROMの恩恵を声優の音声に充ててしまった。そのあおりを食らった演奏部分は内蔵音源に。ハードの使い方の問題で、意図は十分理解できるが、曲を期待したものとしては悲しい。苦渋の選択よね。(それはそれとしてチープな音源も楽しめたけど。それと曲が少し増えた気がする)

最後は、前後編になったため、省略された1のスタッフロール+予告編と完結編のオープニング。本編よりも力入れてたからなあ。予告の曲はプレイ前のノベルウェアの説明に使ってくれていたが、なんかとってつけたような感じだったな。(しかし、文章がほとんど表示されないこの作品はすでにノベルウェアとは別物になってるのでは?)

PCE版の絵柄と声優トークはそのままに、背景描き込み増量でBGMはCM-64のアレンジでプレイできたら素晴らしいが、そんな妄想が叶うことはないのでしょうね。

↓省略された、1のスタッフロールと完結編