病気のこと

前回からの続き。

入社検診結果が出ても、次の「睡眠時無呼吸症候群」の診察までは1ケ月ぐらい。
具体的には5月29日土曜日だった。その日はいつものように病院にいくつもりで直前まで検診のことは忘れていた。ふと思い出し、棚を調べたら検診結果が出てきたので持っていくことに。(忘れていたり、書類が見つからなかったら、どうなっていたか…。)
睡眠時無呼吸症候群」の検診は、いつも二言三言で終わる。リースしている機器のノルマとして定期的に検診をしなくてはならないだけなのだろう。今回も会って30秒で終わるところ、「実は健康診断の結果で再検査になりまして、書類を持ってきました。」
書類を見て、医者の手がハタと止まる。これは、という感触で病院内に連絡。「このあと採血して、糖尿病科に行って。」血を抜き、尿を取り。何やら不穏な雰囲気は感じたが、この時点ではまだ自分は事態を甘く見ていた。これまでも心臓が悪いかもとか言われてCTスキャンしてもらったが、なんともなかったんだぞ。しかし、すでに運命は決まった後だったんだ。
「糖尿病です。今すぐ入院しないとまずいですが、そうもいかないでしょう。いつ入れますか?」若い医師の言葉に目が点になる。
ここで解説。健康な人の血糖値は100程度。今採血した結果、自分の血糖値は500だった。これは紛れもない糖尿病である。「今後、野菜をバリバリ食べて、ご飯やパン、パスタといった糖質は控えないとだめですよ。とはいえ糖質を抜きすぎると逆に低血糖になっちゃうから適度に。野菜といってもポテトは糖質が多いから気をつけて」って糖質とやらを具体的にどれだけ控え、とらなきゃいけないの?そして糖尿病は一生治らない?どういうこと?
動揺しつつもどこか現実感の感じない話をし、入院を二週間後に設定する。入院期間ははっきりと明示してくれない。入院時の状態次第というか、なにもなくても二週間という「メド」は聞き出せた。なんてふわっとした話だ。
医者の話が終わり、別の部屋に連れていかれる。看護師が初めてみる機材を持ってきて説明をはじめる。「これからずっと使いつづけることになるからしっかり覚えてね。」
白い、卵のような機械の頭の蓋をとり、何やらチップを装着する。「痛くないのは薬指の横側」と看護師は言って、アルコールで拭いた自分の指に別のプラスチックのパーツ?を押し付ける。するとパチッ!指から小さく血が膨らむ。彼女はそこにチップのついた機械をつけていくと、機械の表示部に数字が表れる。これで血糖値が測れるらしい。自分も慣れない手つきでチャレンジ。プラスチックのパーツには、内部にバネと針が仕込んであり、押し付けると「いい感じ」に皮膚に穴を開け、血を出させる。我慢できないレベルではないが、痛くないわけでもない。
次にペンの形をした注射器を取り出した。「ここに目盛りがあるから数字を12(だったかな?)に合わせて」少し液をだしたら「それをアルコールで消毒したお腹のところに」今度は説明だけで実演はしてくれないようだ。「切腹みたいな感じですか?」「そんな感じ。」射したら一気に押し込み、数秒待つ。やってみたところ、血糖値を測るよりは痛くない。針も髪の毛のように細い。でも気持ちの良いものではないよな。切腹だぞ?
それら機材を持たされ病院を出る。目の前の薬局で長い時間待ち薬を買って駅へ向かう。どう両親に説明しようか。そう思ったところ、なんと前から父親が歩いてくるではないか。同じ病院に通っていることは知っていたが。自分は土曜の午前、父は午後で、この日の自分の診察が長かったからかとは思うが、それでもこのタイミングで会うとは奇跡か?
早速近くの地下喫茶店に連れていき、経緯を話した。(糖尿病とわかって初めて口にするものだから何を頼むか一瞬迷い、アイスコーヒーのブラックにした。)普段から心配症な父に「心配するなら、今だぞ」と謎のアピールをしたのが記憶に残っている。

週明けに会社に行ってからも大騒ぎ。人事の女性からは、まだ知り合って間もないのに、まるで二度と会えないかのように「さよなら」と言われ(過去に別の社員が糖尿病になって会社を辞めたことが会ったらしい。そのひとは他にも様々な病気を抱えたひとだったらしい。)社長からも「本来こんな状態なら入社できない」とコメント。うわ。周囲からは二週間後の入院を一週間に早めろとプレッシャー。…心配してる風だが、引き継ぎなんやらで苦労するのは自分だ。そんな簡単にスケジュール変えられないんじゃ?っと半信半疑で病院に電話したらあっさり了解。バタバタと慣れない月締め対応と休みの間の引き継ぎ項目を半泣き状態でまとめる。

あと記憶に残ってるのは持ってくものの準備かな。入院のしおりを読んで検討。コロナで面会謝絶だから家族は呼べない。洗濯ものは基本持っていけないのでタオルや寝巻は現地レンタル。さすがに下着はそういうわけにもいかないので少し多めに買わなくては。あとスリッパ的な室内靴も必要で。ジムに履く靴はるがこれだときつきつなので、少しゆったりしたのを買いに行こう。一番悩んだのがWifi。ネットは使って良いようだが、スマホがどれだけもつか?入院用のレンタルWifiという答えもあるようだが…今回はパス。

食事はいつも外食だったが、これは改めなくてはならないな。妻に用意させるのは難しそうだったので母に相談。入院までは毎日実家で夕食をいただくことにした。朝は野菜とトースト一枚。昼はコンビニでサラダ、おにぎり一個。ウインナーなどのちょっとした肉もの。

お金が心配だが、こういうときのための保険だ。
新入社員時から世話してくれていたおばさんは、数年前にあっさりと去ってしまい、会社付近?地元?自分の担当もはっきりしない状態になっていたが、電話だけで未だあったこともないぼんやりとした会社付近のひとより、家近くまで営業に来てくれた地元の女性を自分の担当として指名。手続きをお願いする。

入院t直前の思い出といえば。「ああ、これでしばらく娑婆の空気は吸えないのだな」とばかりに町を徘徊。「入院の間本を読むのもいいな」と思って松戸の本屋で見つけたのが「シブヤで目覚めて」。さすがに分厚く値段も結構するので図書館で借りようと思うが、在庫としてあるのが亀有から20分ぐらい歩いたところ。歩いたよ。でも貸出中とわかりとぼとぼ戻る。結局松戸に戻り購入。しかしこんな分厚いのを病院に持っていくのはなあ、と読み始めたらスルスルと読めちゃう。翌日(=入院前日)に感想までアップしてしまうのだった(笑)。

次回、「入院のこと」に続く。