仮面ライダーオーズ

仮面ライダーOOO(オーズ) VOL.1【DVD】

仮面ライダーOOO(オーズ) VOL.1【DVD】

出演者のひとりがイベントに来てくださるとのことで、それを縁と感じて一気見開始。観始めてすぐに気付く。これ、小林靖子脚本だな。欲望と無欲、始まりと終わり、キャラクターの意味づけと対比。シナリオとキャラのバランス加減。さすがにうまいと感心してみてたら、そのうちに既視感が湧き出てきた。なんというか、電王っぽい。脚本が同じだから当たり前でもあるが、自分にはマンネリの片鱗と感じた。とはいえ電王よりスッキリしていてフラットに比較したらこちらの方が好みかな。折角なのでひとつ考察を。
当作品のテーマは「欲望」。これを正しく捉えたキャラが作中善となる。4名もいるので安定して見られる。最初にシンボルとして立つのは鴻上氏。欲望を体言するだけあり、捉えどころのない人物で欲望のグロデスクさを象徴している。正義というにはまがまがしいが、悪でもない。作品世界そのものを背負っている。次に来るのはもちろん主人公、火野 映司。彼は欲望も、正義もちゃんと分っており、作品内での成長はない。この作品は、主人公が過去のトラウマで失った夢と欲を再び求められるようになるまでの癒しに至る物語といえる。3人めは最初の2号ライダー、バースの伊達 明。世界を駆け回っている点も含め、トラウマがなく成長できた主人公、といえる。成長も、トラウマもない彼は己れが抱える身体のケアだけで作品に参加という立ち位置になるかな。最後は「クスクシエ」の店長、白石 知世子。最後に至るまでオーズたちの活躍を認識することもない、常識人として存在。物語の本質から遠ざけられていた分、彼女の言葉はまっとうな常識としてストンと落ちてくる。一方で「欲望」に翻弄され、成長していく人物は3人。さらっと脇役として現れたとしか見えなかった後藤 慎太郎は、狭い正義感とプライドに押さえ込まれていたが、伊達 明との付き合いでバースの後継者となる。ふたりめはヒロイン、泉 比奈。兄の身体をアンクに奪われた彼女は、大事なものを失った役どころでしかなかったが、火野 映司とアンク、そして兄のことを思ううちに自身の欲望に迷いが起きる。もっとも作品的には常識的立場の彼女は、同じく常識的な人物としての白石 知世子に救われる。知世子が比奈を諭す場面は、ちょうと龍騎の終盤に「OREジャーナル」編集長の大久保 大介が正義に迷う城戸 真司を諭す場面とダブるが、実際そういう役割なのだろう。3人めはもちろんアンク。欲望のメダルの集合でしかない彼が、火野 映司との確執を通して変わっていくのがこの作品の肝。永遠に欲望に囚われ続ける存在のはずが、映司との絆を認知、満足を得て昇天する。成長譚として考えるならば、アンクこそが主人公になるだろう。その分、他の4人+1人のグリードは、利口にはなっていったが、本質的には最後まで変わらず、人間以下の存在で終わっていた。悪の親玉となった真木は…サイコパスに考察は無用か。すべてを育て、成長させる「欲望」の反対として、「終末」に執着したところで彼の正気は終わっていた。

考察は以上。それにしても、周りのライダー俳優が出世していくなかで火野 映司役の渡部秀がパッとしないのが不憫でならない。2枚目半としての演技がハマリすぎているのがいけないのか?「バトルおにいさん」はすごい良かったですよ…。

あとメズールの未来穂香さんがかわいい。怪人の人間態という役柄が、役の中身を想像できない効果になっていたのも大きいな。まだ現役なのね。