ゲゲゲの女房

ゲゲゲの女房―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド)

ゲゲゲの女房―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド)

水木しげるについては、気にはしつつも少し距離を置いていたのかもしれない。もちろん鬼太郎アニメに親しんだ世代で幼き頃は「妖怪大辞典」的な本にずいぶんお世話になった。自伝らしきのも読んでる。戦争で南島に出兵し、マラリアで高熱にうなされ片手を失った、とか。でも。氏自身が書いたものじゃなく、例えば氏の漫画の批評、氏自身について語られたもの、「他人の目から見た水木しげる」に触れたことがあまりなかったんだな。我々の世代なら誰もが親しんたはずの漫画だけど、所詮は古臭い妖怪漫画、世間はそんな評価なのだろうとなんとなく考えていた。
数年前にどこかの雑誌(CONTINUE VOL.38 ←確かこれ。)で京極夏彦のインタビュー記事があって、そこで氏の正当な評価を初めて読んだ気がした。「水木さんの漫画は古く懐かしい。そのため時代遅れと言われがちだが、実は漫画が描かれた最初から古く懐かしい作品として描かれている。新しいものなら古びるが、最初から古いのだからいつの時代にだって対応できる。」←こんな文意だったか。ものすごく納得した。なるほど。いつの時代になっても「ゲゲゲの鬼太郎」がアニメ化されるわけだ。

そんな氏について、最も近い他人=妻の視点から書かれたのが「ゲゲゲの女房」で、今のNHKの朝ドラはそのドラマ化版。興味はあれど「朝ドラじゃ見られない無理だ」、のつもりが、GW中にたまたま見てしまい、今や一番の楽しみになってしまった。
ドラマは、上記前置き部分を無視しても普通に楽しめる。主演の松下奈緒の意味ありげなまなざしは魅力的だし、水木しげる役の向井理は「ママさんバレーでつかまえて」の新婚腑抜けコーチとは全然キャラが違い、細身ながら芯のしっかりした青年として演じられていて好感がもてる。もっとも実際の水木氏はもっと常人の共感を越えたキャラクターらしく、事実を基にしつつも誰もが楽しめるようにマイルドに演出してくれているらしい。
おたく的観点で言えば。ドラマを見てから、敢えて事実と照合、比較してみるのもこの作品の楽しみのひとつと思う。浦木克夫は最初、「彼がねずみ男のモデルになるのでは?」と思ってみていた。実際は逆で、浦木こそねずみ男をモチーフにしたドラマオリジナルの架空の人物だそうだ。ドラマ内ではやっぱり彼をヒントにねずみ男を創作するんじゃ…てややこしいか。三海社の深沢社長は後に「ガロ」を創刊し水木以外にも白土三平つげ義春の活躍の場を作った立役者、長井勝一がモデルだそうで、少女漫画家の河合はるこも、どうやらモデルが実在するらしい。「つりたくにこ」という、バイトをこなしつつ水木プロのアシスタントもしていた女性漫画家だそうだ(不治の病に侵され37才で死去)。アシスタントといえば、つげ義春も水木氏の元でアシスタントをしているので、ドラマでは3人が机を並べて漫画を執筆するシーンもあるかもしれない。

最後に。「いきものがかり」による番組テーマ「ありがとう」も何気に歌詞が心に染みる。変わり者同士(?)、長い人生をともにされてきた夫婦の絆。自分たちもそんな人生を歩めているだろうか。

ありがとう

ありがとう

追記。

ゲゲゲの女房

ゲゲゲの女房

原作の自伝もそのうち読みたい。

追記2。
ゲゲゲの鬼太郎は、電子書籍で読み始めた。そういえばアニメは記憶が染み付いてるけど、原作はあまり読んでいなかった。

追記3。
そういえば、ワリと以前に60&70年代鬼太郎アニメのサントラも買っていたのだった。

ゲゲゲの鬼太郎 60’s+70’s ミュージックファイル

ゲゲゲの鬼太郎 60’s+70’s ミュージックファイル

ライナーノーツには「OPとして有名なテーマソングはアニメ化より先。むしろこの歌がヒントになって鬼太郎のアニメ化が実現した(大意)」とある。(お、wikiにも書いてないぞ!…と思ったらこっちにあった。)これもドラマで再現されるだろうか。