ナルニア国物語

観たので感想。
結論から言うと、原作ファンならば違和感ないだろう。良作と言っていいかもしれない。でも、だからこそ不安視してしまう自分がいる。
問題は原作自身の作品性。本質。名作として疑う余地はないけど、ポピュラー足りえるかというとちょっと疑問あるのよね。

このシリーズは10年以上前に一度読んだ切りなので詳細はほとんど覚えていない。けれどファンタジーを語るうえでの立ち位置と読後感が鮮烈でずっと記憶に残っていた。

作者のC.S.ルイスはオックスフォード大学の私的な集まりの仲間、トールキンが「指輪物語」を書いたのに触発されてこの作品を書いたらしく、二人の作者の関係を記した本も出ている。そんな経緯もあって一ファンタジーファンとしては「指輪物語」の次に読むべき、とお勧めしたいのだけど、実はちょっと躊躇が入る。「ナルニア」は、その経緯にも関わらず「指輪物語」とは大きく違う異質な作品だから。
指輪物語」は異世界を舞台としているが、やろうとしているたのはあくまでも「リアル」。その世界でのリアルを徹底的に追求するのがこの作品のテーマだったと思う。しかし「ナルニア」は異世界で、さらに神話という非現実めいたテーマを扱っている。そのためストーリー展開でのご都合なところ、神がかっているところが鼻に付くのだ。*1
もちろん自分はこの神話・・・宗教がかっている部分が好きだ。生→死をのり越え、蘇りてさらに高みの生を得る。とか。誘惑に負けた人物が大罪を犯し罰を受ける。とか。神です。美しいです。でも現代社会に受け入れられるかなぁ。「指輪物語」「ハリポタ」と続いてきただけあって美しい映像も飽きられてるしぃ。・・・・これが不安の正体。

逆に言うとそんな点が不安になるぐらい、原作再現度は結構高いように思う。まぁ10年前の一読の記憶だからあやふやなんだけど、観ているうちに「あぁ。確かにこれがナルニアだったよな」と思う場面がいくつか。たんすの向こうの雪の中にポツンと立つ街灯とか。フォーンとか。とりわけ4人兄弟はイメージぴったり。素直で前向きにナルニアに溶け込むルーシイ。罪を背負う弱きエドマンド。(この作品としては悪い意味で)現実的なスーザン。そして現実感もナルニアへの順応度もバランス良いピーター。どことなく垢抜けないところも想像どおり。ハリポタのキャラほどビジュアルが特定されていたわけでもないのにすごいよなぁ。1話完結なのでそれなりに充実感あったし。
しかしナルニアは残り6作との関連、そして神話性最高潮の最終話「さいごの戦い」があってこそ!そう。自分は「さいごの戦い」が激しく観たいのだ。次回作以降は今作の実績次第という噂が非常に不安だが、日本はDVDのみでもいい。始めた以上ぜひシリーズ完結を願う。

*1:ちなみにファンタジーの論法で「リアル」は欠かせない。「不思議な世界でのリアルな物語」もしくは「リアルな世界での不思議な物語」のどちらかだ。「不思議な世界での不思議な物語」では読者が付いていけないから。(もちろん「不思議の国のアリス」といった例外はあるけどね。)ナルニアは現実世界からの客人がいること、それとキリスト教的世界観が信者にはリアルに見えてるのかな。信者じゃないとリアル感がやっぱり薄くなると思うな。