さよならを待つふたりのために

さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)

さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)

「これは読むべき」という閃きと、たまたま読むだけの時間があったので一気読み。
まずありがたかったのは、前文で作者自らが「これはフィクションである」と述べていること。若きガン患者の恋愛ストーリーすなわちお涙頂戴になるのは明白で、そのうえノンフィクションとあらば何の批評もできませぬ。しかしその後に続く「作られた物語だって大事という考えを否定してはいけない」という作者のコメントが重い。まさにそういう内容だった。

とてもリアルなのだ。周りにも、もちろん自分も同じ境遇にいないので本当のリアルは分らない。けれど、「すでにガン=死に侵食され、いつも死と隣り合わせになっている」ことが当たり前の日常になっている主人公たちの生き方、考え方が自分が同じ境遇だったらという想像にピタリと当てはまる。けなげな悲劇の主人公扱いなんてされたくないだろうし、非行じみた言動だってしたいだろう。もちろん恋愛だって。そういう世界観が自然に読める。もちろん「死と隣り合わせ」であることを無視はできない。若いのに冷静で深い死生観は、読ませる。「ヤングアダルトにしておくのはもったいない」という感想をいくつかネットで読んだが、主人公と同じ年代の彼らがこれを読み、己れの人生観を深めるには非常に良いテキストになると思うので、自分は「ヤングアダルト」で肯定派。大人は?児童文学だろうがヤングアダルトだろうが素晴らしい読み物はジャンルを問わず素晴らしいのだから、そういう本は自分で見つけるべし。

あと、これ映画化されてるんだよね。
きっと、星のせいじゃない。』げ。日本公開は今月の2/20。すぐか。自分は観ない。それこそおしゃれな「若きガン患者の恋愛ストーリー」になっているだろうから。末期ガン患者の姿をリアルにしたらそれこそ映画映えしない。仕方ないんだろうけど。

予告編↓顔に管はつけてるけど。全体的におしゃれ。