箱根山

きっかけはこの記事。

へー。林さんこんな本読んでるんだー。そういや自分もちょっと前に箱根行ってるんだが、そこで感じた二系列の船の航路の謎について書いてあって興味を持った。カバー絵柄の漫画っぽいイラストも割と好みだし(やっぱり表紙は大切ね)昔の若者のロマンスものも気分転換にいいかと手に取った。以下感想。

100ページあたりまで読み進めないと主要登場人物は出てこない。そこまでは延々と当時の箱根を巡る勢力争いの話。ネットで他の人の感想を漁ってみたところ、この小説は新聞連載。冒頭の箱根勢力争いをメインに書き始めたが、状況が変わって途中で路線を変えたとあって納得した。メインの物語の舞台も、そんな争いの縮小版みたいに諍いあってる二つの古い旅館。双方の跡継ぎカップルが共に10年後の旅館合併再建を誓い、娘は旅館業の修行に、青年は箱根開発企業の一サラリーマンとして旅立つ。ふたりの恋愛は10年後の誓いに込められた将来の約束のみという極めてプラトニック。彼らの戦いはこれからだ、というところ終わっているが、作家側の書きたい点についても、物語の落としどころにしてもまあそれで十分なのだろう。電話の普及もこれから?という時代での10年ごしの遠距離恋愛は相当つらいだろうが、このふたりなら大丈夫と思わせる。まあ、こういうハーピーエンドもたまにはいい。