床屋話

今年の初め頃だったろうか。髪がいい加減伸びきっていたのでいつもの床屋に電話予約。25年ぐらい通っているところ。いつもの担当を指名。
「すみません。○○は昨年末に辞めました。」なんと。彼には20年ぐらい切ってもらっている。今更変えるのはなんか具合が良くない感じ。独立して近くで店を持ったと聞けたので、一旦予約を取り消してネットで探してみた。わりと特徴のある名前なので見つかるかな、と思ったが検索にかからず。仕方ない。同じ店へ。他の担当をあてがってもらう。出てきたのは女性だった。わりといい印象もあり、料金もサービスで半額にしてもらったので納得はした。彼女で続けてみるか。ちなみに前担当についてそれなりに情報は得たが、彼の店がどこにあるのかは教えてくれなかった。まあ店としては正しい営業判断だよな。仕方ない。

夏前ぐらいかな。また髪が伸びたのでその女性担当を指名。普通に髪を切って。レジ清算時に。「近いうちに移転とかするかもしれないので」と住所を聞かれた。しばらくして店から郵便が届く。「店、締めることになりました。ついてはチェーンの他の店をご案内します。」いや、そこまで付き合う気ないから。

そして昨日。また髪が伸びてうっとうしくなってきた。もう千円の即席床屋でいいかと思っていたのだけど、念のため前担当の名前を検索してみたら今度は簡単にヒット。電話して予約。電話の相手は僕と気がついたようでちょっと驚いた声だった。行ってみたら。前の店とは線路をはさんでちょうど向かい側ぐらい。1人で独立したとのことでとてもこじんまりしていたがおしゃれな感じは保たれている。客席は1つだけ。(2F付き店舗だったので2Fにも席を作ったらしいが、今回は見ていない)店主=前担当は歓迎してくれ、髪を切りながらいろいろ話を聞いた。曰く「独立はその1年前から店のスタッフには告げていたが、お客に話すのは独立先が決まってからと思っていた。しかし決まってみると、家賃の関係もあってすぐにそちらに移らなければならない。前の店からは得意客への案内状を出すのは拒否され。独立を決めて前の店を出るまでの2ケ月間。来たお客に口頭で話すことしか出来なかった」らしい。自分は半年に一回ペースだからタイミングが合わなかったようだ。前の店の経営が悪いのを知っていたとか、独立になんらかの関係あったのではとの推測を語ると「関係はあるでしょうね。あの店の客の半分は自分のでしたから」なるほど。自分のようにネットで探してきた客とか、たまたま正面の飲食店で食べてたら見慣れた顔があったから、と来てくれた客とかもいるらしい。
前の店で彼の次に担当してくれた女性も前の店の閉店とともに仕事は辞め、ときどきこの店に手伝いにくるのだそうだ。そんな縁を感じた話。オチはないけど日記に残しておこう。