十角館の殺人

十角館の殺人 (講談社文庫)

十角館の殺人 (講談社文庫)

久々にミステリーでも読むか。と思ったとき、最初に脳裏に浮かんだのがこのタイトル。「おすすめ本」としてネットでしばしば紹介されてたのを覚えていたからだ。で、読了につき感想。

まず。あなたが読みたかったのはこれだよね。このシチューエーションだよね!って作者の声が聴こえるよう。名だたるミステリー作家の名を冠したミステリ研の連中の物言いもそうだ。で、そのとおりに展開する王道パターン。確かに自分が最も好きなミステリーはこの手の代表作『そして誰もいなくなった』だし、ゲームファンとして『かまいたちの夜』も好きだ。わくわくしなかったわけではないが、一方でワンパターンなフォーマットをご丁寧に踏襲していく流れにちょっと飽きちゃった感じも。これは読書時の気分の問題かもしれないが。島と平行して本土の様子を流すのには当初期待したが、まるで真相に向かう気配がなくこちらは拍子抜け。

で。もちろん。いつもどおり最後まで騙されたわけだが。それでも「怪しい」ところはきちんと押さえていたので驚きは少なかった。(ここからネタバレ気味)『EVER17』とか『シックスセンス』などで叙述トリックに耐性ができていたので、ニックネームのみでの会話という時点で「なにかある」と思ったし。本文でも言及されてたとおり最初から建物にいる人間には準備期間があって怪しいし。安楽椅子探偵が昼間行くというスケッチが事件と関係なさすぎで返って怪しいし。殺される登場人物のなかに意外と心情描写&疑われる場面が少ない人間が一名いるし。

「望まれている」ものとはいえワンパターン踏襲なところが個人的に佳作どまりの印象となった。もちろん「私が読みたかったのはこれだ!」というニーズにしっかり応えているから「おすすめ本」としての評価は揺るがない。