王の帰還

自ら大地を開墾し、国を建てた王がいた。仲間を募り、大地を耕し、国は強固になった。王はいつしか「偉大な者」
とまで呼ばれるようになったが同時に驕り高ぶっていった。

あるとき彼の地から呼んだ豪商との交渉が決裂。豪商はそのときの恨みから国に革命を起こし、瞬く間に政権を乗っ取ってしまった。かつての仲間たちは王に愛想を尽かしほとんどが豪商の側につき、王家の人々は国を追われた。そして以前見つけておいた辺境の小さな島を居場所とし、そこで慎ましく暮らした。

豪商はやがて帝王と名乗り国に君臨。かつて王が作った技に故郷から持ってきた技術力を加え武力を強化。周囲の国々までも蹴散らし、王の時代以上の圧政で民から搾取していった。大地を耕すことを怠り国は荒れていくが、そんな惨状には目もくれず、帝王は己れの真の野望「世界征服」を夢見るばかり。

島での王家の生活はつらいものだったが、優良な鉱物資源にも恵まれそれなりに力を蓄えていった。ある日王は、不遇の家を建て直したひとりの男を己れの養子に迎え後継者とする。

そうして、ついに帝王が動く日が来た。黒光りする石を用いた新たな剣を鍛え、王家根絶やしの進軍を開始。島はなすすべもないと思われたが、新王は己れの発想で新たに鍛えた、地味ながらも変わった形の刀を振り上げる。見た目の地味さにも関わらず力は強烈で、かつては味方でもあった、帝王の手先どもをバッタバッタとなぎ倒す。倒していくたびに島は振るえ、大きくなり、やがて元の国に匹敵するほどの広さと大きさを得ていった。そこで帝王はようやく、国の荒廃が影響し自らの力が弱まっていることに気づくが時すでに遅し。今度は新王の番であった。

彼はもう一方の「革命」と記された刀を持ち、かつて己れの国であった地に進軍を開始する。帝王は世界征服のお題目を叫びつつ、精一杯の技術力を集めた剣を作るが重くてろくに持ち上がらない。王の姿が見えてくるにつれ、かつて「偉大な者」と敬った民たちは当時を思い出し、口にし始めた。ついに「偉大なる者」が帰ってくる。王が帰還されるのだ、と。
そしてその運命の日は、今日。