動物戦隊ジュウオウジャー

スーパー戦隊シリーズ 動物戦隊ジュウオウジャー VOL.1 [DVD]

スーパー戦隊シリーズ 動物戦隊ジュウオウジャー VOL.1 [DVD]

ニンニンジャーの次の作品に対する期待度は正直低かった。
だいたい動物戦隊ってなんだよ。ジューマンのマスク(!)がドンキのパーティグッズみたいでなんだよと。実際どこかこじんまりとした作風で予算がないんじゃないかと心配するぐらい。が、それはそれ。実際に観ていくと、ちゃんと手堅く作っているのが分る。

今回の敵…デスガリアンの目的が地球征服とか破壊ですらなく、ただのゲームという設定がうまい。幼児向け展開にありがちなアホな作戦(主にアザルド)にしても、ゲームだからいい。いったんデスガリアンの攻撃を退けても、本気じゃないから助かっただけという怖さ。

そして「地球の生き物は、どこかでみんな繋がっている」という大テーマを重厚な人間ドラマで魅せてくれたジュウオウジャー。神作ではないが、良作には違いない。

せっかくなのでキャラを追いながらもう少し語りたい。

ジュウオウジャー側:

お気に入り順にいこう。

風切大和:ジュウオウイーグル、ゴリラ、ホエール

「地球の生き物は、どこかでみんな繋がっている」ことを説き、勝手気ままなジューマンを誠実な対応で仲間に引き込んだ、作品テーマを体得した人物。そんな理想に生きられる聖人かと思いきや、家庭内に問題があり、改めて「地球の生き物は、どこかでみんな繋がっている」ことを自覚させられる、血肉あるキャラクターになってくれた。

アム:ジュウオウタイガー

空気を読んで、人を動かす小悪魔的ちゃっかり系と思いきや、むしろ空気読みで人を思いやる思慮深さをも備えた深みあるキャラ。最終的に大和を父の元に導いたのが彼女であったのも納得できるところ。

門藤操:ジュウオウザワールド

3体のジューマンの力を備えた最強キャラ登場、と思わせ実はメンタル最弱で面倒くさいという現実にはいそうにないが、キャラクターとしては非常に美味しいひと。彼が出てから作品の雰囲気が変わっていったのは事実。それでいて最終的には成長もしてチームに馴染んでいるのがほっこりするね。

レオ:ジュウオウライオン

自分に正直真っ直ぐキャラで、独自性は薄い。しかし現実でも物語のキャラとしてもこういう人物は必要不可欠で、彼がきちんと演じてくれたおかげでジューマンたちの感情が良く理解できた。

タスク:ジュウオウエレファント

真面目で堅物故の面倒くさいキャラで序盤こそ目立ったが、聡明であるはずの特長はアムに、面倒くさいキャラのお株はみっちゃんに奪われ、後半は地味化してしまった感じ。

セラ:ジュウオウシャーク

鮫女…?ネコ科女性のアムと違い、表情の掴みづらい彼女の役は演じつらかったろう。後半には結婚詐欺師との邂逅やレオとのかけあいで姉御肌みたいなのが見えてきてたのだが、そこまで。勿体ない。

デスガリアン+α

クバル:

頭良さげキャラ。ジニスに星を滅ぼされたこと、復讐の動機が明らかになる。地球側に寝返る期待もちょびっとだけあったのだが、ジニスへの復讐計画が失敗に終わると地球をエサに命乞いという最低なクズ加減を見せてくれた。面白かったよ、クバル…。

アザルド:

脳筋キャラ。彼の繰り出す怪人たちがことごとくオバカなおかげで、殺伐としたブラッドゲームがお子様向け特撮番組に沿うものになってくれた。終盤に記憶を取り戻し自身の正体が明らかになるとワイルドさが一気にアップ。
そこんとこがジニスに嫌われ巨大怪人状態でジ・エンド。

バングレイ:

途中に乱入、デスガリアンに加入することなく場を荒らしただけだが、力は強いわ策略家だわ残虐な性格だわおまけに触った相手の記憶から人物を復元する脅威の特殊能力と超強力。とりわけ特殊能力は「クバルの本音」や「大和の家庭の事情」を明かす演出面で、再生怪人オール大進撃によるぬいぐるみ制作予算削減の面で大活躍。とはいえぽっと出の第三勢力が長く居座っため本筋の印象が薄れたのが残念なところ。引き際が肝心ということで。

ナリア:

敵側の紅一点。怪人の巨大化をする役割をもってたり、唯一ジニスに尽くす献身キャラとして印象的ではあったが、その出自や、なぜそこまでしてジニスに尽くすのかが語られない点で意外と謎多いひとではある。

ジニス:

ブラッドゲームの主催者。ゲームなので、本気を出さないので、底知れぬ強さを感じさせた。最後には「ずいぶん楽しませてもらったよ、ありがとうジュウオウジャー」とか言って決着付けずに帰っちゃえば謎めいた強さを後世まで残せたというのに、決着を付けてしまった勿体無い人。
メーバ(戦闘員)の集合体という正体は彼の強さが全部弱さにひっくり返るほどの衝撃ではあったけれど、ここ、演出面では弱くないですか?だいぶ説明じみてましたよ。シリーズ内でもなにげにクバルやバングレイらにメーバのひ弱さ、下等さを印象付ける侮蔑的なセリフを言わせるとか演出を入れておくべきだったのでは?またラストバトルでもジュウオウジャーの攻撃で身体が破損するたびにコインになって弾け、そこからメーバたちが逃げ出していく、みたいな表現があればよかったのに。大和の家族問題をきっちりまとめてくれただけに残念。(もちろんどっちを選ぶかというなら大和の方に力を入れる選択は正しかったけれど。)

以上。
順番でいくと次作はつまらないはずなのだけど、キュウレンジャーは開始前の印象はわりといい。まずは主人公の演技力がどうか、かな。メイン脚本も変わったのが吉と出るか?