この世界の片隅に

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 上 (アクションコミックス)

同じ作者の「夕凪の街 桜の国」は既読。こちらも読まねばと思っているうちにアニメ映画化。なのでこちらから観た。全力で泣かせる作品ではないと事前情報は得てはいたが、やっぱり泣くんだろうなと覚悟していったら肩透かし。後日原作を購入したが、こっちの方がいい。映画もしっかり作られているのは知っているが、この作品は好きなテンポで読み返すのがいい。読み返すたびに、じわじわと味わいが出てくる。

サントラも入手したいが、これはまだ。オープニングの「悲しくてやりきれない」を聴いて、久々にフォークルがマイブームになったり。

ちなみに。「シンゴジラ」も「この世界の…」も、それぞれのジャンル「ゴジラ映画」「戦争映画」を一皮剥いて一段リアルが進んでいるのが共通点かと。ゴジラが現れたら、簡単に自衛隊が攻撃するが、その前には様々な政府、関係者の葛藤があるはず、そこを観たい→観せてくれたのが「シンゴジラ」。戦争時代といっても、悲壮体験ばかりで現実味が感じられない→もっと当時の生活をリアルに描いたのが「この世界の片隅に」。
戦争現役世代の表現者の作品は、彼らが伝えたい体験を前面に出したあげく、それ以後の世代から見た処の現実味を失わせていた。彼らからしたら当たり前で、語るまでもなかったことを、僕達の世代は知りたかったというのに。僕らと同世代である作者が、その失われた世界を蘇らせたことには大変意味がある。