魔進戦隊キラメイジャー

ある意味、捉えどころが一筋縄ではいかないタイトルだったと思う。

設定がザル。モチーフが宝石といっても全然わからず。ゴーグルファイブ?あと乗り物?ヨドン軍とかいっても、終盤まで敵の組織は親玉不在。幹部のうちひとりはもともと裏切り者。不純な動機で勝手気ままに動いてるし、キラメイジャー側も彫刻顔の怖いお姫様(声はかわいいんだけどね。水瀬いのりさんだし)ひとりと博士のようで博士じゃないおちゃめな中年が作った、それ以外の組織員を誰ひとりとして見ない謎の組織。そのくせ彼等の基地は大都会の真ん中で異様な存在感を示しているし。映画の0話を見てればもう少し補完されてたのかもしれないが、ともかく設定的にはリアルさを演出する気なんてほぼなかったのではと思えるべニア板並みの立て付けで。敵側の怪人もマスクが変わるだけ。服装自体は他の戦闘員と同じというところに予算感の厳しさも感じた。おまけに始まってすぐレッドの役者さんが新型コロナに罹り、プリキュア同様1ケ月休みになったのもきつかった。作品世界に馴染むべき序盤にあれはない。


しかし、一方で作り手の狙いは割と明確だった。キャラクターを立てること。主役メンバーたちのキャラが立てば、それが直接作品の面白さに繋がる。デカレンジャーから続く、熟練の塚田メソッド。それがキラメイジャー。設定がザルだけに、後付け設定もやり易かったのではないだろうか。

以下はそんなメンバー感想。

赤のひと:夢想気味のどちらかといえばどんくさいキャラだが、どこか頼もしく、そして大きく成長していく。役者さんのイメージとぴったりな感じで製作側もしてやったりというところではないだろうか。

黄のひと:即座に作戦を立て、実行できる。熱さも統率力もある。シンボル的リーダーの赤に対して実務面でのリーダー。彼がいたことでチームとしての深みが出る良いポジション。役者のひとの今後にも期待したい。

緑のひと:「かわいい」かつバカまっしぐら担当。花があるっていいことです。

ピンクのひと:仮面ライダーゴーストの妹時代の方がキラキラしてたかも。大人のお姉さんポジが今ひとつ魅力をアピールできなかった気もする。外科医キャラとか言われてもねえ。

青のひと:ストイックで生真面目なキャラは地味になりがち。物語的にもあまり重要なポジションになれなかったように思う。ただ真面目にバカをつけたコメディ色がついてなんとなく美味しい位置にはいたようだ。

銀のひと:博士じゃないひとの兄で彫刻顔の怖いお姫様にとっても兄で、宝石にもなれて巨大ロボにもなるお宝ハンターという設定てんこ盛り追加戦士。プリキュアの追加戦士もこうだったらもうちょっと物語も進んだのにな、っていう。

ザルな設定と予算の少なさを玄人な脚本でカバー。キラメイジャーの評価はここにある。…自分はその弱点を忘れられなかったので評価は「良」止まり。厳しい状況のなか、なんとか次に繋いだというところかと思う。

で、ここからはゼンカイジャーだ。白倉Pが戻ってきた時点で攻めることは分かるが。いや、それにしても攻めすぎ。人間ひとりにロボ4人。しかもリーダーは赤じゃなくて白。容姿もアカレンジャー+ビックワンだしな。ヒロインが榊原郁恵ってのも…そりゃ冗談だろうけどさ。ゴーカイジャー以来の集大成作品だが、ゴーカイと違うアプローチ。役者に頼るんであれば、せいぜい20年ぐらいしか辿れないのだが、着ぐるみで攻めれば昭和の初期作品でもいけるはず。ゴレンジャーはもちろん、デンジマンからフラッシュマン当たりまで、自分の最初期に嵌った作品はゴーカイではほとんで扱えなかったらからなあ。渡辺宙明サウンドも気になるところだし。

そんな不安と期待をすべて形にするのは…脚本ですよ、 香村純子さん。
「ヒーリングっと」が序盤の熱気を捨てて、あんな投げっぱなしなラストを迎えた原因。真相が明かされるまで、自分は決めつけることにしたよ。プリキュアの途中でゼンカイジャーの仕事が降ってきて、それにかかりっきりになってしまったからだ。そうだよな?タイミングは悪いし、仕事は重い。しかもヤリガイたっぷりだ。それまでの仕事をほっぽり出すのも無理はない。せめてプリキュアを捨てた分、今作はすごい仕事をしてください。まずは序盤。ヒーリングっとと同じく、そしてスーパー戦隊としては珍しく1話ごとにメンバーが入ってくる構成っぽい。無機質なロボキャラたちに強く感情移入できる魂を。過去作を気持ち良く思い出させる印象に残るエピソードを。そして唯一無二のゼンカイジャーのカラーを。頼むしかない。