騎士竜戦隊リュウソウジャー

 前作がいろいろと凄かったので、続く作品は大変だと、覚悟はしていた。この作品の感想を一言で書くと、こうだ→「ひでえ(笑)」。

悪い部分はいくらでも挙げられる。

リュウソウジャーたちが殺伐としすぎ。なぜ女性メンバーがひとりなのか。その女性メンバー、アスナも素材としては可愛いのに、なぜか「頭が弱くて食いしん坊の力持ち」というほとんど雌ゴリラ的存在としか扱われない。

・メンバー外だが、レギュラー女性キャラとして設定されたういちゃんが素材は…これもいいのだろうが、どのみちキャラに引きずられて痛いひとにしか見えない。しかも途中から空気化して終盤直前に退場。

・敵組織が貧弱。組織といっても、幹部怪人(ドルイドン)ひとりに変なやつ(クレオン)がひとり。あとはザコ兵のみ。ドルイドン自体は数人いるので時々追加されるが徒党を組まず、クレオンが付き合わされるだけ。
クレオンが何でドルイドンと組んでいるのか不明。彼自身は怪人マイナソーを作れるのでドルイドンにいいように扱われるのだが、クレオン側のメリットが良く分からない。しかもドルイドンたちは揃いも揃って我儘な上司的存在ばかりで、クレオンはほとんどブラック企業の下っ端的扱い。もっとも彼自身も性格は悪いので同情心は湧かない。

クレオンは自身の体から生み出す汁を人間に飲ませることで(気持ち悪いよな)、そのひとのマイナス感情から怪人マイナソーを作りだせる。…が、こういう「人の感情を怪人化」というのは平成仮面ライダーで良く使われる手法。怪人を生み出した登場人物のドラマを引き出す展開が多いが、当作ではそんなこともあまりなく、ドラマもないままマイナソーを倒して終わることが多い。

一方、途中からの展開&てこ入れで、そこそこ良くなった面もあり。それは中盤敵・味方双方に表れた。

・敵側のドルイドンとして追加されたワイズルー様が、変な格好でショータイムショータイムと言って殺伐とした作風を和らげてくれた。彼自身も性格は非道だが、ともあれエンターテインメントに傾倒してくれていたのは大きい。クレオンとの関係も良くなっていったし。最高オブ最高ではあった。

・味方側の追加戦士カナロの設定がおかしい。子供番組で婚活キャラってなんだよ。しかし彼が女性探しに励んでくれたおかげで、毎度物語のとっかかりとして使え、振られることでオチにもなり。さらに毎回登場する女性たちによって殺伐とした画面が華やかに。おまけに妹ロリキャラのオトちゃんまで連れてくるサービスぶり。(完全な邪推だが、オトちゃんがレギュラー化していくのと並行してういちゃんの存在が消えていった流れを思うに、オトちゃんの人件費がういちゃんの出番を奪っていったのかもしれない。)

そう。良い面、悪い面、どっちを挙げても感想は一言。「ひでえ(笑)」に尽きるのだ。


あと、こういう状況でなお、この作品を決定的に嫌いになれなかった一因は主人公なんだろう。爬虫類顔のコウには、最初少し距離を感じ、主人公に相応しいのかと疑っていたのは事実。だが、バーサーガー的な出自をもつにしろ、彼は精いっぱいの前向きな笑顔と良い意味でのテンプレ熱血ぶりで見る者を安心させてくれた。どんな作品であっても、好きか嫌いかのカギを握るのはやはり主人公なのだなと再認識した次第。この点がキュウレンジャーとの差であろう。(言っちゃった。)

↑と、ここまでは終盤終了2、3話前に書いたもの。以下は終わってからの追加感想。

途中から登場したエラスがボスキャラ的役割を終えた後、残りのドルイドンは全員存命。怪人マイナソーを作り出せるクレオンも健在。彼等が今後も暴れる気であれば、全然1話と状況変わってないだろ…。ただそこで突然ワイズルーがクレオンの星に行こうといい出す不思議展開。クレオンが宇宙人である設定なんて序盤でちょっとだけ触れただけだから、びっくりした視聴者は多そうだ。

そして公式サイトでプロデューサーが「エラスの意志でマイナソーが生み出されていた」という設定を本編で出し損ねましたと言う始末。それすげー大事なとこだろ。ひでえ(笑)

[追記:2020.12.14]
最近、ういちゃんの中のひと、金城茉奈さんがお亡くなりになったというニュースを読んだ。
まずはご冥福をお祈りします。そうなると、リュウソウジャー放映期間中に闘病されていた可能性はかなり高かったとみて間違いないんだろう。とすると「オトちゃんの人件費がういちゃんの出番を奪っていった」とかいう自分の下世話なコメントは、かなり的外れかつ失礼だったわけだ。放映中に闘病のことは書けなかったところを考えればネガティブな退場と受け取られても仕方なかったのだろうけど、今事実を知れば申し訳ない気持ちになる。
ういちゃんというキャラはリュウソウ族にとっては身近にいる人間代表。その関係性を軸に物語を動かしていったなら、この作品はより深い物語になった可能性もあるし、もともとそういう設計だったのかもしれない。彼女がその重要性を表す前にドロップアウト…いや、ドロップアウトだったら別の役柄を獲得すればよいが、彼女の復帰を期待して待っていたとするなら作品全体の方向性は当初予定がらだいぶ捻じ曲げてしまったはずだ。だとすると、一番ひでえと思ったのは制作側なのかもしれない。(誤解を招きたくないので強調しておくが、ひでえのは金城茉奈さんではなく、金城茉奈さんの病気、ね。彼女の闘病生活を伺い知る由もないが、さそご苦労されたのではないだろうか。)